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ベルンハルト・シュリンク 『朗読者』Bernhard Schlink "Der Vorleser" 黄疸を病んだ15歳の少年、ミヒャエル・ベルクは学校の帰りに気分が悪くなり吐いているところを、はるかに年上の女性、ハンナに介抱される。やがて病勢のおさまった彼はハンナの住居を訪れるようになり、ハンナと肉体関係をもつ。2人の関係が深まる中、ハンナは彼に本を朗読してくれるようにと頼む。彼はハンナに多くの本を読んで聞かせるが、同年代の友人たちとの関係に目覚めるとともに、ハンナとの関係に揺らぎを感じる。そんなある日、ハンナは彼の前から突如として姿を消してしまう。 やがて学生となり法学の道に進んだミヒャエルがハンナと再会したのはナチス裁判の法廷だった。彼が大学のゼミの一環として訪れた法廷で、彼女は強制収容所の看守として被告人席に立たされていたのだ。ハンナの奇妙な振る舞いや自らに不利な証言は、やがて彼女の立場を追い込んでいく。 ミヒャエルは熱心に法廷に足を運ぶうちに、彼女が彼の前から姿を消した理由、彼女のあらゆる悲劇の原因、彼女が自らに不利な証言をしてまで隠し通 そうとした秘密に思い当たる…。
テーマ設定だけを見れば、この作品は必ずしも現代日本でアクチュアルな問題を扱っているとはいえないかもしれない。しかしシュリンクの精緻な筆が巧みに描き出す社会的弱者の悲劇は、国境と時代を超えて社会と個人との関係そのものに通 じていく。 これだけ社会的な問題を扱いながら、読者を退屈させずに作品に釘付けにするストーリーの面 白さがシュリンクの非凡さを示している。社会問題に対する関心を離れて、ラブストーリーとして読んでも十分に楽しめる。 余談だが、シュリンクの作品に臨場感を与えている要素の一つとして、においの描写 が挙げられるだろう。ミヒャエルが語るハンナの想い出は、彼女のにおいの記憶でもある。語り手の嗅覚がこの作品をエロティックに、時には物悲しく演出しているといえるだろう。 ©Wataru Watanabe, 2002
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